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(更新: ORICON NEWS

心が「動く」ユーモア術 〜Lesson2 ユーモア力が付くトレーニング〜

Lesson1では、ユーモア学の大島希巳江先生から、「ユーモア」がいかなるものかを解説してもらった。Lesson2でも大島先生に聞いた具体的なトレーニング方法やテクニック、ユニークな事例を紹介する。ユーモア=常識からの逸脱をものにして、2017年を笑顔で過ごすめに、ぜひチャレンジを。
Profile
大島希巳江さん

神奈川大学 外国語学部 国際文化交流学科教授。国際ユーモア学会員。専門分野は異文化コミュニケーション・社会言語学・ユーモア学。コミュニケーション全般、および英語教育における”笑いとユーモアの効果”を専門研究としている。その一環として1997年から英語落語の海外公演をプロデュースし、自身も古典・新作落語を演じ、自ら司会を務めるなど意欲的に活動中。アメリカ、フィリピン、インド、ブルネイ、パキスタンなど海外公演は世界約20カ国、200回を超える。また、企業の営業成績とユーモアとの関連性、英語習得に効果のあるユーモアやジョークについてなど、幅広い講演活動を行っている。
Lesson1 笑いは“能力”ではなく“技術” まとめ)

・ユーモアは学問として存在する
・笑うことはさまざまなメリットがある
・日本人は海外では笑わない人と思われている
・ユーモアは衝突を避け、心を和ませるための「思いやり」
・日本社会にも多様性が進み、ユーモアが求められている
・ユーモアは固有の能力ではなく、身に着けられる技術である
・ユーモアとは「常識からの逸脱」である
・大笑いさせなくてもいい。少し心が動くだけでいい。

ユーモア力トレーニングの基礎「比喩表現をする」

ユーモアは「常識からの逸脱」である。それがすべてではあるが、どのように“普通じゃないこと”をすればいいのか。早速、具体的なトレーニング方法を聞いた。

「簡単にできるユーモアのトレーニングとしては比喩表現があります。トレーニングであり、実際に使えるものでもある。何かを何かに例えてみましょう。そして、なぜそれに例えたのかというところも話のネタになり、うまく説明できればなお良いです」
実践しよう!

<色のことを“色を使わずに”表現する>

「黄色のソファを「黄色のソファ」と言ったらものすごく普通じゃないですか。例える時には10個くらい考えると、だんだん変なものが出てくる。ヒマワリ、タンポポとか定番から始まって、ネタがなくなって8個めくらいから変なものが出てきます。そういうものをコミュニケーションで活用するんです」


例)「その、“ちょっと痛みかけの卵の黄身みたいなソファ”にある雑誌取って」

「“なんだそりゃ!?”ってなりますよね。常識的な表現から逸脱することで面白さが生まれます。アイデアが枯渇してカスカスになって絞り出たものが、普通じゃなくて面白かったりします。大人になってくると常識が身について正しい表現ができるので、それが「常識からの逸脱」の邪魔をしている。子どもは知識や常識が大人よりも乏しいので、大人にとって普通じゃない面白い表現をすることが多いのです。常識から出るトレーニングとして10個、常識のからを打ち破るトレーニングをおすすめします」
<他のトレーニング例>
・「形状」を10個比喩表現する

「ラケット」と「ボール」の組み合わせを何に例える?

「ラケット」と「ボール」の組み合わせを何に例える?

・「音」を10個比喩表現する

ジュージューという擬音を使わず何に例える?

ジュージューという擬音を使わず何に例える?

テクニック1 心が動きやすい状況を作る「ミラーリング」と「笑顔」

「コミュニケーション学としても通じるテクニックが「共感を示す」こと。反対するにしても「それいいね。素晴らしいと思う。ここについてもう少し話したいんだけど…」と、一度共感してから反対しましょう」

共感を示す「ミラーリング」。飲みの場でも相手がグラスを口に運ぶタイミングと合わせると良い

共感を示す「ミラーリング」。飲みの場でも相手がグラスを口に運ぶタイミングと合わせると良い

「顔、表情、動き、を同調(真似する)ミラーリングをすると、相手が好意を感じて笑いやすくなります。自分が笑えば相手も笑いやすくなります。相手が笑わないからといって自分も笑わないと2人ともずーっと笑えません。「この人と良いコミュニケーションをとりたい」と思ったら、まず自分が笑うことが大事です。それでも相手が笑ってくれなかったら嫌われているのかもしれませんので見極めは必要ですが(笑)」

積極的な笑顔で相手の笑顔を引き出しましょう。笑顔は伝染しやすいんです。相手が笑ってくれなかった、といって落ち込むことはありません。笑顔を引き出せなかったとしても、心には確実に働きかけています。好意を示すことは「非言語コミュニケーション」といって一つの方法です」

テクニック2 道具を使う

「トレーニングでは面白いことを考えられても、本番ではなかなかできないということもあります。即興ですから、難しいですよね。そういう方には、道具を使うことをおすすめしています」

「私が担当している企業のユーモア研修に参加する方はおじさんが多い。部下に嫌われている気がするとか、ものすごい難しい顔をした方とか。そういう立場の方にとっては「面白いことを言う」のはものすごくハードルが高い。コミュニケーション自体が苦手です、という方にも」
「サインプレートといいいますが、雑貨店に売っている「禁煙」「準備中」「営業中」とかの看板のようなものを活用します。おっかない顔をしているおじさまに提案するのは、ブルドックの絵がかいてある「猛犬注意」です(笑)。机に置いておいておくだけでいいんです。「あれ、部長なんかついてる」「猛犬注意だって」…なんですかそれ、っていう話すきっかけにもなります。恐い顔をしている人だけどユーモアのセンスあるんだなって思ってくれる人もいるでしょう。周りの人の行動が変わらなかったとしても、その人のイメージは一気に変わります。「あの人実はちょっと面白い人なのかも」って雰囲気を作れます」

使用例:休むときには「故障中」のサインプレート


「あの人壊れてるっぽいよ」なんて話にしてくれるかもしれませんよ。そういう“くふっ”、っていうのが大切。ユニークな雰囲気を職場に残してあげるという「思いやり」です。やらなくたって誰も怒らないんだけど、みんなを少しだけ楽しい気持ちにさせてあげることができる。

ユーモアは自己防衛でもあります。自分を守る手段であり、周りから攻撃されないための工夫。「笑いは敵を作らず」と、人を笑わすことができる人は敵を作らないといわれています。小道具をおいておくだけでも、いじめられにくくなります。連続で休む時も「あの人また休んでるよ」「でも、故障中だからしょうがないかも」って、笑うことによって人はネガティブな感情を打ち消すことができる。あいつヤな奴だなと思っても、笑わされるとその感情がかき消される。

職場では小さなユーモアをちりばめていき、面白くていい人だよね、という印象を作りましょう。それがいつの間にか自分を守ることになるんです。いざというときにみんなが守ってくれるキャラをつくれるんです」

テクニック3 (わざと)真面目に答えない

常識からの逸脱はある意味真面目に答えないということでもある。真面目に答えたらそこで会話が終わってしまうことも。答えなくてもいい質問には質問に対して質問で返すというのもアリ。

例)「今日お昼何食べました?」「それ知ってどうするの?(笑)」
※嫌味なく明るく言う、スマイルは必須

「普通に答えたら一往復で終わってしまう質問ですけれど、質問返しをするともう2〜3往復ができる。そこで距離が縮まります」
それ知ってどうするの? やっぱり教えない! 
→ えーなんで?いいじゃん!教えてよ!

それ知ってどうするの?僕に気があるの? 
→ いやいや、そんなつもりじゃ!

それ知ってどうするの?どうもしないよね! 
→ いえ、明日の昼の参考にしようかと

問題の解決をユーモア的に考える

では、どういうときにユーモアを活用できるのだろうか。大島先生によると、ユーモアを活用するのは、日々の対人コミュニケーションだけではなく、仕事にも活用でき、企業の経営者やリーダーの人たちはユーモアセンスのある人が多いという。


「解決できない問題が世の中にはあります。例えば、長い会議ってどうしようもないですよね。どうやっても短くならない。どの会社も、みんな嫌だと思っているのに、なぜか長い。資料に工夫を凝らしても、やっぱり短くならない。まともに考えたものは全部ダメ。世界で話題になった有名な話ですが、会議を短くするために一番効果があったのは「椅子をなくすこと」だったんです。普通じゃない、ユーモラスな考えですよね。

国際ユーモア学会でも話題になりました。キヤノンさんとか日本の一部の企業でも導入しています。こういったユーモラスなアプローチは、問題を2、3個一気に解決することがあります。

立つことにより「会議が短くなる」ほかに、動きが出て「会議が活性化」する。「行き詰まることがなくなる」「いいアイデアが出る」。人の脳と足は繋がっているといわれています。足を使うことによって脳が活性化する。哲学者や作家って、ネタに詰まると歩きますよね。あれは理にかなっているんです。息詰まったところに、“流れ”がよくなるんでしょうね。

もしくは座り心地の悪い椅子にするっていう案もありますね。自分の常識をはみ出たアイデアによって、ととととって連鎖的に問題が解決する。そういう例はアメリアにはすごく多いです」

アメリカの斬新なユーモア例

「ウサギのおまわりさん」

「アメリカのサンフランシスコの警察署は、出動するときにウサギの着ぐるみで出動します。1人は警官の制服、一人はウサギ。そうすると、現場についたとたんに空気がほころびます。通常は、警察が来るとケンカに火に油を注ぐことになったり、警官に歯向かってきたりするそうですが、ウサギがくると「何これ? 警察なのに着ぐるみ着てるよ〜」と、怒りが鎮まるようです。人は笑うことでネガティブな感情がなくなる例ですね。そして、警察官の怪我も減ったそうです。ウサギのおまわりさんは日本じゃありえないですよね(笑)」

「全部が窓際の席のレストラン」

「とある窓が少ないレストランでは、窓際の席が埋まっている時に窓際希望のお客さんが来た場合には、大きな窓の絵を壁に貼り付けて案内するんだそうです。普段はしまっておいて、「窓際がいい」という人にだけやるらしいです。これも日本でやったら「ふざけているのか!」って怒られそうですよね。実際、ふざけてますから(笑)」





解決できない問題こそ、「どうせ解決できないんだからユーモラスに」という考え方はあります。その結果、予想以上のメリットが生まれることがあります。

最後に 男女の性質の違いを知る

「コメディアンは世界的にも圧倒的に男性の方が多い。男性のほうが、コメディを発信することに強い興味をもっており、“公のもの”を好みます。女性は発信よりも共有。女子は“内輪の笑い”が圧倒的に好きです。内輪じゃない笑いはどうでもいいから、お笑い番組が理解できない女性もいます。「この前〇〇さん変な恰好してたよね」「ありえなくない?あの配色」「わかる〜!超面白かったよね」とか、自分たちだけで分かる情報を共有して喜ぶのが女性です。

男性が対人コミュニケーションで悩むのは、「パブリック=(仕事)」でないから。男性はパブリックトーク、女性はプライベートトークという性質があります。30代以上の男性は仕事上のコミュニケーションはできる人ばかりですが、プライベートトークに近づく「対人コミュニケーション」が苦手な人が多いと感じます。そういう方こそ、男女の性質の差を考えつつ「ユーモアを使う」ことを試してみてくだい」



(取材・文 / 加藤由盛)

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