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永瀬正敏「“雨”は最大のチャンス」

CULTURE
1983年に『ションベン・ライダー』で映画デビューして以来、30年以上も第一線で活躍してきた俳優・永瀬正敏。国内外問わず多くの作品で唯一無二の存在感を放っており、彼に憧れて映画界に飛び込む若者も多いという。そんな永瀬に、今月のテーマ「雨を愛でる」にちなみ、人生や仕事の“晴れ”(成功)と“雨”(苦難)について聞いた。返ってきた答えは、「“雨”はチャンス」。その真意とは―。

「5年間ずっと映画に出られなかった。その“雨”の時期でも心は“晴れ”ていた」


「人生は、一日のなかでも“晴れ”と“雨”があったりするので、はっきりといつが“晴れ”でいつが“雨”、とはなかなか言えない気がします。毎日がその繰り返し。でも僕の中の大きな部分で言えば、5年間ずっと映画に出演できなかった時期があり、それが“雨”だったと思います」。
永瀬にとっての“人生の雨”は、16歳で映画デビューして以降、5年間も、まったく映画に出演できなかった時期だそう。それは、永瀬にとってどんな経験だったのか。その当時のことを思い返しながら、その時期をどう過ごし、それが今にどう影響しているのかを話してくれた。
「デビュー作『ションベン・ライダー』に出演させて頂いたことで映画の現場が大好きになったんです。相米慎二(そうまい・しんじ)監督の現場が好きだったというか。それから、ずっと映画に出続けたいという思いを抱いていたけど、直後から5年ぐらいは出られませんでした。それは、表面的には“雨の時期”と言えますね。でも、当時は、心の中ではまったく雨は降っていなかった。逆に晴れ晴れしい気持ちすらあったというか…。“いつか映画に出演したい”という強い希望を持ち続けていたというのが理由かもしれません。

案外“晴れ”と“雨”、どちらがいいかは言えないものだと思います。というのも、“晴れ”の時期は調子に乗ってしまい、足元をすくわれるかもしれない。単純にはいかないのが人生で、そこが人生の面白さなんじゃないかなと。今思うと、僕にとって映画に出られない5年間の“雨”の時期は、最大のチャンスだったと思います」。

人は、うまくいかない時期が続くと諦めたり腐ったりしてしまいがち。けれど、永瀬の“映画にかける情熱”は、並大抵のものではなかったのだろう。当時は、もしかしたら悩んだこともあったのかもしれない。けれど、どんな時間も無駄にせずに映画を愛し続けたことで、“映画人生の晴れ”は、運命の糸に導かれて彼の元へと訪れた。
「その5年間は暇を持て余していたので、映画館に通い続けました。いろんな映画に出会い、いろんな役者さんを知り、いつかこういう映画に出たい、こういう人たちと一緒に作品を作りたい、と強く思うようになっていったんです。そんなとき、ある女優さんから『永瀬君が好きそうなすごい映画があるから、絶対観に行ったほうがいいよ』と薦められて、観に行ったのがジム・ジャームッシュ監督の『ストレンジャー・ザン・パラダイス』。

満席で、立ち見も出ているほど人気だったので、シアター内の階段に座って観たのを今も覚えています。そして観終わった瞬間に“これはすごい映画だな”と、衝撃を受けました。その後すぐに受けたオーディションで、『映画に出ないか?』と言ってくださったのが、ジム・ジャームッシュ監督だったんです。

5年間、何の映画にも出演していなかった僕に声をかけてくださった。驚きましたし、願えば思いは届くものなんだな、と感動しました。もし、“人生の雨”の時期に、もう芝居なんていいやと諦めていたら、ジム・ジャームッシュ監督には出会えなかったかもしれない」。
「“雨”は最大のチャンス」と永瀬が語る理由は、この経験があったから。もちろん、「映画に出る」という目標を諦めずに行動し続ける、その情熱と忍耐があったからこそのこと。永瀬は自ら“雨”を“恵みの雨”にしたのだ。
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