OLIVER

my job , my heart 「考えるラーメン屋」

BUSINESS
『OLIVER』仕事人特集インタビュー。街の中華食堂で食べるリーズナブルな中華そばは、昭和の時代を象徴する大衆食のひとつだった。時代は変わってラーメン専門店が激増し、近年ではミシュランガイドで星を取得する店も登場している。ここ10年の間でもトレンドが激変し「研究し尽くされて新たなトレンドはもう生まれない」とも言われるラーメン業界において、斬新な一杯を追い求める人気店の店主に話を聞いた。「志奈そば 田なか」店主・田中友樹の仕事哲学。
TOPICS
P1.レストランシェフからラーメン店へ転身
P2.ラーメン店の仕事とは・そのやりがい
P3.いいラーメン店とは〜ラーメン仕事人に5つの質問
PLOFILE
「志奈そば田なか」「志奈そば田なか second」
店主 田中友樹さん

東京都・江東区出身36歳。2013年に池袋に「志奈そば田なか」を開業し、2015年末に秋葉原にセカンドブランド「志奈そば田なか second」をオープン。比較的新しいお店ながら、ラーメン通にも高評価を受けており、講談社の『第17回業界最高権威 TRYラーメン大賞2016-2017』(トーキョー・ラーメン・オブ・イヤー)で秋葉原の店が優秀賞を受賞、まぜそば部門では2位にランクインする躍進を見せる。田中氏は『お願いランキング』などのテレビ番組にも出演した経験があり、店舗は多数のメディアで紹介されている。

<志奈そば 田なか>
東京都豊島区東池袋2-19-2
03-3988-0118
営業時間:11:00〜15:00、18:00〜22:00 ※土曜は11:00〜15:00
定休日:日曜

<支奈そば 田なか second>
東京都千代田区外神田3-4-1
03-3258-5282
営業時間:11:00〜15:30、17:00〜20:45 ※日曜は11:00〜18:00
定休日:月曜
「志奈そば田なか」の鯵ニボそば 750円

一見、スタンダードな中華そばに見えるが、スープは定番のトンコツや鶏ガラなどの動物系のだしは一切使わずに、魚介類だけで仕上げる。濃厚な煮干しと鯵のだしのスープはとろみがついていて、細麺との絡みが抜群。インパクトの強い節を全面に押し出しながらも、昆布のくせのないうま味が全体を覆う。

食べ進めるとほんのりと柚子や大葉の風味を感じ、トッピングはメンマかと思いきやコリコリ食感が楽しい山クラゲだったりと、細部へこだわりが光る。好みでコショウをかけると、より「ラーメン感」が増し、七味唐辛子をかけると「そば感」が増す。好みで食べ分けが可能。工夫を凝らし、驚きのある1杯だ。

田中氏はトッピングを一切載せずとことんスープにこだわった“高級かけそば”や、洋食の技法と取り入れたパスタ風まぜそばなど、両店舗で独創的なメニューを生み出し、新しいラーメンの形を探している。
「志奈そば 田なか second」の極kiwami 桐生麺 900円 ※12月24日まで

11月24日から1カ月間限定で、人気ゲーム『龍が如く』×『宅麺』×『志奈そば 田なか second』がコラボしたラーメンを提供。PS4ゲーム『龍が如く6 命の詩』主人公の桐生一馬をイメージした、“いかついけれど、食べると優しい味わい”のラーメンを考案。元イタリアンシェフらしく、イカスミとニンニクを使った斬新な味に仕上がっている。WEBサイト「宅麺」からコラボラーメンのお取り寄せも可能だ。
「宅麺」(http://www.takumen.com/)

料理人の原体験は、極貧時代の生きるための料理

田中氏は料理人を志した当初、イタリアン・創作料理をレストランで学んでいた。その時はラーメン店を営むことになるとは思っていなかったという。いかなる思いで、「ラーメン」を自分の仕事にしたのだろうか。遡って聞いてみると料理にふれたきっかけの面白い体験を明かしてくれた。フィールドが変わっても、ずっと持っていたのは「料理を楽しむ気持ち」だ。

「高校を卒業してすぐ、自立するために実家を出ました。所持金2万円で飛び出して、寮に入れる仕事を探しました。で、2万円で“食べる”ために、まず米とフライパンを買いました。フライパンで米を炊いて、おかずがないので、“詰め放題”をやっている八百屋やスーパーを探して…。最初は「今週はピーマンだけ」「今週は100円で乗り切ろう」そんな風に乗り切りました。ですが、当然フライパンで炒める料理だけでは飽きてくるんですよね。次の月は調味料を増やします。味付けを変えながらレパートリーを増やしていく。そうすると、フライパン以外の調理器具も欲しくなって、蒸し器を買ったり…料理って、面白いなって思いました。節約生活を通じて料理の楽しさを覚えていったんです」

生活するうえで、料理の大切さと楽しさを覚えたという田中氏。そうした流れで料理人への道に進むことになった。

「昼は寮の仕事、夜はイタリアンレストラン。昼夜交互に仕事をしていた。まかないでご飯も食べられるし。日によってはランチ時間にも働けたので、何かと都合がよかった」

最初に修業したイタリアンは偶然だったというが、ここでさらに本格的な料理を学び、興味を深めていった。料理人として生きていくつもりが、一時は別の道を考えたという。

『一杯のフルコース』に気づきレストランシェフからラーメン職人へ転身

秋葉原(左)、池袋(右)、各店テレビ取材・著名人来店の思い出。

秋葉原(左)、池袋(右)、各店テレビ取材・著名人来店の思い出。

「イタリアンで2年半修業して、違うジャンルの料理も学びたくて、フレンチベースの創作料理店に勤めました。料理人として経験を積んで、いつかはダイニング系の店を作りたかったんです。で、まずは独立にどれだけお金がかかるか知りたくて、自分のやりたいお店の内容で独立するためにはいくら必要か、“本気の見積もり”を出してもらったんですが、なんとそれが3000万円でして(笑)。何年後に店出せるのか考えちゃって。現実を突きつけられました。そして、料理を続けるのか、辞めるのかということも考えました」

自分の夢の価格が3000万。店の家賃、調理機材、器など細部を突き詰めて算出した額だった。これが一つの転機となり、ラーメン職人の道に進むことになる。

「食べ歩きが好きで、その当時も、ラーメンをよく食べ歩いていました。最近のラーメンってすごいおいしいなと思っていたんですよ。で、ある時ラーメンの構成の面白さに気づいたんです。ラーメンは一杯の丼の中に、前菜(具)、スープ、パスタ(麺)、メインの肉(チャーシュー)があって…。それでいてリーズナブル。大衆的でありながら『一杯のフルコース』だと。実は僕がやりたかったのはこれなんじゃないかって」
「志奈そば田なかsecond」の味玉塩中華そば880円

「志奈そば田なかsecond」の味玉塩中華そば880円

基本的な構成はどの店も変わらないのに、各店でまったく異なるラーメンが提供されている。そこに面白さを感じたそう。レストランより少ない資金で始められる見込みもあり、早速ラーメン店での修業を開始する。

某TV番組で日本一のラーメン店になった「俺の空」に入社し、千葉の二号店に勤めるのをきっかけに千葉に引っ越す。その後知人がラーメン店「三軒屋」を起業する際、総料理長として調理側の責任者を任される。レシピ開発、メニューの設定、立ち上げなど料理に関する全般を任せられ、4店舗まで拡大する。そして2013年に独立し、東池袋にようやく夢だった自分の店「志奈そば 田なか」を構えた。

「新しい挑戦をしたいってこと、長年親しんだ千葉への恩返しをしたいと思って、千葉の海をイメージしたラーメンである、「鯵ニボ中華そば」を作りました。動物系を使わず、煮干し、青魚のインパクトあるうま味がを全面に押し出して、さらに昆布を大量に使って…。海藻の周りを新鮮なアジやイワシが泳いでいるイメージです。青魚でも刺身みたいに新鮮なものは臭みがないじゃないですか。そういう味をラーメンで表現したかったんです」
鯵ニボ中華そばのスープ。大量の昆布を使い、とろみのある魚介スープに仕上げた。

鯵ニボ中華そばのスープ。大量の昆布を使い、とろみのある魚介スープに仕上げた。

大量のアジと煮干しをスープに使っているが、クセやエグみがない。抽出の仕方など、技術的な話は企業秘密。このラーメンと、曜日で変わる限定の創作ラーメンで地道にファンを増やし、開店2年で人気店として紹介されるようになった。
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