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(更新: ORICON NEWS

my job , my heart 「考えるラーメン屋」

多忙ながらもワークライフバランスを重視する

人気ラーメン店の仕事はいかなるものか。一日を見てみよう。
<「志奈そば田なか」田中氏の1日>※一例

05:30 起床
6:00 店へ向かう(通勤) 
給与の計算、シフトのまとめ、スタッフへの指示だしなどを電車の中でスマートフォンから行う

8:00すぎ 店へ出勤 
11時の開店に向けて、スープ、トッピングなどの仕込みをしながら、限定ラーメンを考えてレシピを書く

11:00 お店オープン
14:00ごろ 昼ピーク終盤
落ち着いてきたころ、もうひとつの店舗へ移動
抜き打ちチェックの要素もあり、品質を保てているかのチェックも余念がない。

15:00 アイドルタイムに仕込み
食材の発注、仕込みをしながら、レシピの試作をする。体調がすぐれない時はマッサージなど体のメンテナンスをするときも。また、雑誌などの取材対応も昼の時間に行うことが多い。

17:00 夜営業開始
お客さんが落ち着いてきたら平行して翌日の仕込みを行う

20:30ごろ 退勤(店を出る) 
店長に閉店作業を任せ、退店。通勤時と同じく、諸々の業務連絡やまとめを電車内で行う

23:40 帰宅

休みは月により変動。イベント出店などが入ると休みはつぶれてしまう。忙しい時は月に2日。通常は1週間に1日は休むように調整しているという。
仕事に充てる時間が多く、通勤時の電車内でも仕事に追われる田中氏。オフの日は子どもと一緒にサーフィンを楽しんでいるという。毎日、通勤に片道2時間半かけても、大好きな千葉の海の近くに住み続ける。ハードな仕事だからこそ、オンオフをしっかり切り替えるのが田中流だという。
「海が好きでサーフィンもするし、修業時代から千葉の海沿いに住んでいます。毎日2時間半かけて店に通っている。オープンしたてはすごく大変でしたから、しばらくは八時半で閉店していました。僕の通勤の都合で(笑)。通勤は遠いですが、JR外房線の土気駅から大網駅の途中トンネルがありまして、トンネルを超えると一気に山が増えて景色が変わるんです。そこで一日のオンオフがリセットされます」

稼ぐために不眠不休で働くことはしたくない。心の切り替えをしっかりして、オフの時間もしっかり楽しむことは、仕事のため、お客さんのためでもある。

「この仕事は体が資本です。体調が悪くなると舌、味覚のバランスも崩れてしまい、それがラーメンの味に影響してしまいます。人間の体は、夏場だと塩分が欲しくなるし、逆に塩分や甘みを欲するときは疲労が溜まっていたりするものです。人体は気づかないところで調整してしまうものですから、体調にはすごく気を付けています」

味覚は体験した人にしか分からない繊細なもの。口に入れるものだから、その質を保つために、肉体的・精神的な休暇が大切だと考える。

ラーメン店の仕事の魅力は「新しい価値」を作れること

今のラーメン店の経営という仕事の楽しさについて問いかけると、「新しい価値を作れること」と答える。

「ラーメン業界全体の実力が底上げされていると感じます。ミシュランで星を取る店も出てきて、ラーメンというものが麺料理としてようやく世界に通じるものになりつつあると思います。どこの店もラーメンの構成が面白くなってきていて、食材も考え方も自由化しています。決まりがないこと、なんでもあり、どんな食材を使ってもいいのがラーメンの面白いところです」

「みんな仲良く」という小さい頃からの口癖が料理にも生きているという。

「伝統的な日本料理では、この料理にはこの食材でこの手法じゃないとダメとか、決まり事があります。でも、僕は最終的に口にできたものがおいしければそれでいいと考えています。丁寧に作られて、バランスがよくて、ストーリーがあって、口の中で遊び心があって、それが、楽しくておいしい。それが大事。

例えば洋菓子も日々変わっていて、今はバウムクーヘンの表面がブリュレになっているものもありますよね。時代はどんどん進んでいきます。セオリーにとらわれない取り組みがパイオニアになっていくと思うんです。今は店が軌道に乗って責任者に任せられるようになりましたから、頭を働かせることができる。一杯の構成を考えるのが楽しい。自由な形で新しい価値を考えられることがラーメン店の魅力だと、料理人として感じています」

目指すのは「想像がつかない味」のラーメン

2016年大つけ麺博 つけ麺VSラーメン〜本当に美味いのはどっちだ決定戦〜 に関東代表ラーメン軍として出店。

2016年大つけ麺博 つけ麺VSラーメン〜本当に美味いのはどっちだ決定戦〜 に関東代表ラーメン軍として出店。オリジナルメニュー「金の塩中華そば」を販売した。

今のラーメン店の在り方について考えを巡らせる田中氏。考案するメニューに心掛けていることはあるのだろうか。「本当においしいラーメン店はいっぱいある」と言い、また、星の数あるラーメン店の中から選んでもらうために「想像がつかない味」をテーマにメニューを開発している。

「分かりやすい料理のほうが一般評価は高いと思います。例えば、和食の料理人が『ハモと松茸のラーメン』を作るとするじゃないですか。それ絶対においしいと思いませんか? 骨切などの下処理、丁寧なアク抜き、火加減…技術のない人には作れないものですし、実際にそういうハイレベルなラーメンを作っているお店もあるんじゃないかな。そしておそらく、食べると『ハモと松茸だ』と分かるおいしさだと思います。 

僕は逆に、「想像しづらいラーメン」をテーマにしています。その食材をこんな風に使うの!?っていう意表をついたものを出したい。驚きがあるラーメン、記憶に残るラーメン、頭から離れないラーメンは心掛けています。なにより、その方が僕自身、作るのが楽しいんです」

アンチョビ塩まぜそば1030円

アンチョビ塩まぜそば1030円

実際に、自由な発想でレシピを作る。「志奈そば田なかsecond」で出しているまぜそばは、パスタをイメージして、タリアテッレのような平打ち太麺に、アンチョビをタレに使用。食べると濃厚な風味がありながら、印象としては不思議とまぜそばだ。このメニューはラーメン通から評価され、ラーメンの権威的単行本『TRYラーメン大賞2016-2017』の汁なし部門2位を獲得している。

やりがいは、お客さんのおいしいの一言とそれに応える接客

田中氏は時間を見つけて和洋中の飲食店を食べ歩いて記録する。ラーメン以外の料理に触れて、新しいメニューのインスピレーションを得ている。

田中氏は時間を見つけて和洋中の飲食店を食べ歩いて記録する。ラーメン以外の料理に触れて、新しいメニューのインスピレーションを得ている。

「やっぱりお客さんの『おいしい』の一言に尽きます。それに応える接客ができた時は最高です。僕はスタッフにサービス料を払う店に食べに行きなさい、と常々言っています。質の良いサービスを学んでもらって、人を好きになってもらいたい。こっち側がお客さんを好きにならないと、お客さんから好かれるわけがない。まして、うちの店は場所が繁華街から外れた場所にあるので…リピーターを大切にしてます。お客さんと仲良くなることが多いですよ。声をかけてくれて、ラーメンを通じてコミュニケーション取って、おいしいって言ってもらえて、納得のいく接客ができる。それがなにより力になります」

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