読者へメッセージ「己を知り、異文化の刺激を“自分ごと”に変換せよ」

「私なりの人生を楽しむコツは“やってみたいことをやる”ですね。例えば僕は作品を作る時のアイデアとして、まったく別のものを見てこれを狂言でやってみたらどうかな？と考えます。例えばボレロを狂言でやってみる。考え込むよりやっちゃう方が出来るということもあります。やってみることで何が刺激的なのか分かることもありますから。

そのためには強みも弱みも含めて、己をまず知る事。狂言は650年の伝統がありますが、非常にシンプルにできているので、僕は映画のような大掛かりなものに憧れる部分もあります。例えば、我々の狂言は“面”を使うことがある。シェイクスピアをやるときに、その狂言の面を使った演出にしようとか、自分達のアドバンテージの活かし方を考えます。勝負をするためには相手の土俵に乗る事も必要です。乗ったうえで全世界的に有名な作品をやるときに、狂言ならではの手法でその作品の持つ世界感を描き出そうと思うんです。例えるなら、西洋の食材で日本料理を作るようなものでしょうか」

「30代・40代は攻める時期。世の中が分かってくる年代ですが、一番厳しいときでもありますよね。役職につける人や、そうでない人もいたりと分かれ道もあるでしょう。そんな時こそ余裕や遊び心を持てるように、仕事ばかりではなく、文化の精神を持つと良いと思います。古典的なものというのは、先人たちの知識や工夫の集積なので、学ぶべきことはたくさんあります。そこにあるアイデアやものの考え方・刺激を自分の仕事や生活に活かしていただけると、良いなあと思います」

（取材・文　／　加藤由盛）
（撮影　／　RYUGO SAITO）

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Information
『花戦さ』
6月3日（土）公開

出演：野村萬斎　市川猿之助　中井貴一　佐々木蔵之介　佐藤浩市
脚本：森下佳子
音楽：久石　譲
監督：篠原哲雄
原作：鬼塚　忠「花戦さ」（角川文庫刊）
出演：野村萬斎　市川猿之助　中井貴一　佐々木蔵之介　佐藤浩市
オフィシャルサイト：http://www.hanaikusa.jp/
（C）2017「花戦さ」製作委員会