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小林武史「はみ出してみないと分からないこともある」
小林武史が考える“生きたお金の使い方”
「これまでの『ap bank』の活動やBank Bandも、ある種の優しさに作用する傾向にありました。例えば環境問題のことを考えるときにはバランスを取ることになりがちだったり、ひとときのムーブメントではダメで「持続性」が重要になったりするから、「包んでいく」「繋げていく」という意味が多かったと思う。
今回Reborn-Art Festivalになった時には、人間そのものも素材として考えるという、ある意味突き放してみることを提示しています。捨てられたものかもしれないものの中から可能性を見出す。ap bankを続けてきて、震災があって、次のステップとして見ていたものは、よりラフにタフにアクティブになっていくということだった気がするんです。ap bankがリベラルという立場で他方を批判していくというスタンスでは、ものごとは解決しないという思いもありました」
小林は、大きな力としてまとまるより、個々が考えることや、その想いを拡散していくことを次のステップとして考えている。
「それが去年のプレイベントに象徴されていました。震災の被害の密度が濃かったといわれている石巻市の南浜地区、まさに津波がきたギリギリの際のところで開催したわけです。本当に多くのものが流れていって、生活のいろいろなものの“置き場”になっていたんです。それをどう動かしていくのかというところに立とうとしていました。その地に生きている人々も含めて、いかにゼロからこのフェスを作っていくかということでした。インフラから作っていくのは規模的にも予算的にも「アイタタタ」ってくらい、とにかく大がかりで大変なものがありましたね(笑)。
僕ら届ける側の気持ちは、復興支援や環境問題への興味関心を集めるだけでなく、このフェスを継続していかなければいけないということも大切に考えています。僕も櫻井君も言っているんですが、ap bankのお金はもう社会的な繋がりを作るための公的なものとして考えてます。「生きたお金の使い方って何だろう」っていうことを一つのお題としてap bankは設立されたとも言えるんです。自然環境の破壊に目をつぶって、資本的商業的に爆走していいわけがないっていうところからのスタートでした。「お金って道具でしょ?」っていう。その、お金に振り回されすぎてやいませんか?っていうことですね」
「お金は道具」とはいえ、「お金の問題は甘くしているとダメ、クリアしないとこういった新しいプロジェクトは生まれない」と語る。小林武史が考える“生きたお金の使い方”の一つの形が『Reborn-Art Festival2017』だったのだ。
「実際のところは、これから増えていくんだなという感じはしています。現代アートは音楽ほど市民権を得ていない。アートは生活者の日常的なもの、お茶の間レベルには至っていないのが現状です。しかしながら、新潟で「大地の芸術祭」が成功していることから見ても、地方と大きな力が本質的に「根付いていく」「つながっていく」役目はアートが果たしやすいと思うんです」