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(更新: ORICON NEWS

篠山紀信「 “時代”と併走し続ける」

“写真の力”vs“場所の力”を体感してほしい

原美術館は、もともと個人邸宅として1938年に建てられたもの。西洋モダニスム建築のデザインを取り入れ、中庭を包みこむように緩やかな円弧を描いた空間構成と、外壁のオフホワイトのタイル張りが特徴的な日本近代建築史の観点からも貴重な建築のひとつだ。1979年、個人邸宅から現代美術を中心とした私立美術館となり、今まで数々の展覧会を開催してきた。その原美術館に訪れた篠山は、その建物や土地に色気を感じたという。

「原美術館は、建物自身に色気があるんです。写真にとって、土地・場というのは、とても重要なこと。原美術館という場は歴史もあるし、建物にもドラマがある、土地にもいろんな物語がある。美術館なのに、窓が多いとか変わった造りでもあります。そういうところから考えると、ここで作品を作るのが一番いいんじゃないかと『原美術館で全部作品を作りませんか。全作品をここで撮って、美術館に返しましょう!』と提案したら、全面的に協力してくれることになったんです。次から次へとイマジネーションが湧いてきました」

篠山はこれまでも美術館は作品の“死体置き場”だと公言してきた。「巨匠の作品です、どうぞご覧ください――」そういった仰々しい展示に違和感があった。写真は生々しくてパワーのあるものだという考えからだ。今回の展覧会と写真集は、美術館そのものを作品にして、“生きている状態”で展示しようという試みだ。

篠山紀信「快楽の館」2016年 (C)Kishin Shinoyama 2016

篠山紀信「快楽の館」2016年 (C)Kishin Shinoyama 2016

「すごい広さの美術館を埋める作品全部が、撮り下ろしの新作。しかも撮影期間が、長いようで短い10日間。自分が言ったこととはいえ、正直大変なことになったな…と思いましたね(苦笑)。10日間、どこで何を撮る…とか、モデルやヘアメイクの手配とか、お弁当どうしようか〜など、事前の準備は大変だったけど、撮り始めたら、どんどん面白くなって、イメージがどんどんかき立てられる。アイデアが枯渇することは決してなかったです。結局33人のモデルで76作品を撮り下ろしました」

篠山紀信「快楽の館」2016年 (C)Kishin Shinoyama 2016

篠山紀信「快楽の館」2016年 (C)Kishin Shinoyama 2016

今回の展覧会が他と一番違うのは、「写真を撮った場所に展覧する」ということ。普通の美術館では、どこに飾られるか、どんな大きさで展示されるのか分からないまま撮影されたり、そもそも撮影時には美術館に飾られることを想定していないことの方が多い。今回は飾る場所やその写真の大きさまで想像しながらの撮影となった。今見ている作品が創られた中に自分がいる…という、普通では味わえない感動が、この展覧会にはあるという。

篠山紀信「快楽の館」2016年 (C)Kishin Shinoyama 2016

篠山紀信「快楽の館」2016年 (C)Kishin Shinoyama 2016

「これは本当に素晴らしい展覧会になります。誰が一番この展覧会を見たいかというと…、実は僕ですね。想像していた場所に自分の作品がはめこまれた時、どんなに感動するか…。だからって、今この記事を読んでも、『あぁ〜、篠山こんなことやってるんだ』と分かってもらいたくないですね。絶対、来てもらいたい。原美術館の持っている力、そして僕の写真の力。力と力のバトル、せめぎ合いなんです。そこに不思議な興奮が生まれる。その場に来て、空間の中に浸ることによって、その臨場感を体感できるわけですよ。こんなことをやった人は、今まで誰一人いないはず」

篠山紀信「快楽の館」2016年 (C)Kishin Shinoyama 2016

篠山紀信「快楽の館」2016年 (C)Kishin Shinoyama 2016

まさにスタッフと展示の細部をつめている最中での取材で、篠山の胸の高鳴りがストレートに伝わって来た。原美術館で生まれたばかりの作品を、原美術館という空間から見たときの臨場感をぜひ感じて欲しい、そう力強く語った。

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