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魂の歌うたい・竹原ピストルのメッセージの伝え方

CULTURE
 松本人志玉置浩二らが絶賛する“魂の歌うたい”であるミュージシャン・竹原ピストル。俳優としても評価され、映画『永い言い訳』では第40回日本アカデミー賞 優秀助演男優賞も受賞した。音楽、俳優業両方で頭角を現す竹原ピストルの投げかけるメッセージはなぜ人の心を動かすのか。4月21日にブルーレイ&DVDが発売される映画『永い言い訳』出演の話を中心に、“歌うたい”の魂の奥底にある思いに迫った。

■本当の自分は理屈っぽい部分がある

 映画『永い言い訳』は妻を事故で失った人気作家の衣笠幸夫(本木雅弘)が主人公。竹原ピストルは同じ事故で妻を失った大宮陽一を演じる。まっすぐな心で生きている陽一を演じる竹原ピストルのことを、西川美和監督も主演の本木雅弘も口をそろえて「魂そのもののような存在」と語っている。

 「僕は陽一のような人間だと思われるんですよね。『世間の人が僕に対して抱くイメージはああなんだろうな』って思います。でも実際の僕は、あそこまでストレートに感情のまま動ける人間じゃないんです。理詰めなところもありますし、ウジウジしたところもあります。僕にとって大宮陽一は『こういう男っていいな』と憧れるような人物像だったんですね。そういう意味で、演じやすい役でした」

感情表現が激しい役柄に挑戦した竹原。芝居と音楽、表現で共通するところはあるのだろうか。

 「歌と芝居は、まったく別物だと思っています。根本的にあり方が違います。例えばライブだったら、自分自身が監督になって理想のライブに近づけていく。対して映画は監督がいて、自分は演者ですから、監督のイメージ通りの動きができるかどうかで勝負をするもの。芝居を経験したことで音楽に影響があるとは考えていませんが、ひょっとしたら無意識的に作用しているところはあるかもしれません」

■“感動の源”を徹底的に言語化「寸分たがわず、何が何でもこの感動を伝えたい」

 竹原ピストルが投げかける強いメッセージ性の本質はどこにあるのか。楽曲制作で大切にしていることを聞いた。

 「感動したことはストレートに “とっても感動した”って伝えればいいと思います。でも僕は、“何をもってこれに感動しているのか”、“この感動を構成する要素は何なのだろう”ということを自問自答して考えて、それを表すために言葉を並べていくんです。寸分たがわずこの想いを伝えたい、と思う時に理屈っぽく考えちゃうんです。言葉選びも、一番ベストな組み合わせを試行錯誤しながら“どんな言葉を用いようとも、この感情は絶対に伝えたい”と思って曲を作っています」

 そんな風に自分の内に生まれた感動をとことんかみ砕いてから形にしていく。映画『永い言い訳』の台本を読んで作曲した「たった二種類の金魚鉢」という曲がある。どのような感動を抱いたのだろうか。

 「西川美和監督作品のリアルさって言いそうになるんですが、それだとちょっと違うんです。例えば、人間の優しさや希望を表現した歌は世の中にたくさんあります。そういう歌が好きな人もたくさんいて、僕自身も好きです。でも、その種の希望は身の回りに実在しますか? ある意味ファンタジーですよね。この映画はそこらへんに転がっている痛み、優しさ、希望、絶望…確かに存在するものだけで構成している。その作品作りの姿勢に感動したんです」

 「今作『永い言い訳』に関わり浮かんだフレーズは水槽…『金魚鉢』。ギュッと密閉された空間を描きたかった。マンションの窓の明かりの数だけ、暮らしている人たちが確かに存在していて、それぞれの暮らしがある。そのおびただしい数の人生に、どこか恐ろしい気持ちになるんです。点にしか見えないその明かりひとつひとつの中に、喜怒哀楽、幸せ、不幸…そういったものがパンパンに充満している空間がある現実。その息苦しさを投影したんでしょうね。決して息苦しさだけではないですが」

■ベタなことを身の丈に合ったメッセージとして届けたい

 「良いことばかりが人生ではない、だからこそ人が輝く」、そういった現実感を持つ竹原の楽曲だから、人生経験を積んできた大人の男性ファンの共感を生んでいるのではないか。

 「結局のところ自分が歌いたいことって「つらいけれど、くじけずに頑張ろう」「夢に向かって情熱を燃やすことは素敵なことだ」ってことなんです。実はものすごくベタなことしか歌っていないんです。でも、今言ったようなことをそのまま歌にすると、まったく身の丈に合わなくなるわけです。もう一人の自分が、「まてまて、お前が言える事じゃないだろう」って、自分自身に対して強烈なリミッターをかけてしまう。だから、言葉として身の丈を合わせていくんです」

 「大昔からの腐れ縁の悪友には、“バカ野郎、諦めるんじゃねえよこの野郎!”って言ったっていいじゃないですか。伝えたいイメージをそのまま表すのではなくて、そういう想いを歌にしていきたい。それが、聞いてくださった人の心に、万が一届けばいいなと思って歌っています」

 多い年は年間250本のライブを行っていた竹原ピストル。竹原ピストル流の人生を楽しむコツはやはり音楽にあった。

 「僕が心底楽しいって思えるのは、やっぱりライブです。毎日でも歌いたい。ライブから吸収するものがたくさんあります。4月5日にリリースする新アルバム『PEACE OUT』は、出来上がった曲を並べてみたら、自然と旅芸人から見た風景とか別れとかそういうようなものがテーマとして浮かんできました。聴いてくれた人にも、それぞれの人生で思い浮かぶ顔があるといいなと思います」

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