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野村萬斎、夢は「愛される継承者であり指導者」

CULTURE
 テレビドラマ、映画、舞台などでも活躍する狂言師・野村萬斎。6月3日公開となる最新出演作映画『花戦さ』では、華道の家元・池坊(いけのぼう)の歴史上の人物である花僧・池坊専好を熱演。映画制作秘話や、萬斎流の人生の楽しみ方を語ってくれた。

■歴史上の“天才”花僧を天真爛漫に表現した

 映画『花戦さ』の主人公は花僧・池坊専好。池坊は現代まで続く華道の家元であり、生け花の源流として知られている。本作では権力の栄華を極めた時代の豊臣秀吉を池坊専好が打ち負かしたという、人知れず行われた“大戦さ”を描く。

 「今回は華道家というよりは“天才である人”を演じる苦労がありました。花の力を信じている精神的姿勢や、花にどれだけ対峙しているかということを見せないといけなかった。とにかく花しか見ていない、天真爛漫さを心がけました。ありがたいことに芸能の世界にいると周りに天才はいるものですから、今回は身近な天才音楽家を参考にしました。ずっと笛を吹いていて、演奏が彼にとっての“命の発散”で、相手がどう思うかなんて考えもしない。自分が吹けば思いは人に伝わると信じている。人の名前を憶えられない専好さんもきっと彼と同じで、花しか見ていないのだろうと思いました」

■やりたいことを貫くため、ブレない信念を持つ

 専好は織田信長の前で挑戦的かつ大がかりな作品を披露する。大きな力のある人に対抗できるエネルギーを出すんだという意識で臨む。萬斎は専好のことを「弱みや、ブレがあると思い切れないので、自分に確信や信念を持ってものおじせずに物事に立ち向かおうとする。プレッシャーを逆に楽しむエネルギーを持ちうる人間」と分析する。そして、世の男性に「挑戦する気持ちを大事にしてほしい」とエールを送る。

 「おじけづかないというのは、一種の少年の心の現れですね。私は、20代後半にイギリスに留学して、そこで自分のこと、日本のこと、狂言のこと、これからどうあるべきかを考えた時期がありました。50代になって、その当時書いたこと読み返してみて気づいたんですが、今もその当時と考えていることがまったくブレていない。考えを変えたいと思うこともなかった。もしかすると成長していないだけなのかもしれませんが(笑)。ブレないことは信念を持っているということ。信念があったうえで冒険する少年的なエネルギーがあれば、ちゃんと思いは通じると私も信じています」

■「愛される継承者であり指導者」はひとつの夢

  “花”を主軸に描いた本作品。歴史上の人物であり、今も続く華道の家元、池坊専好を演じることで、伝統芸能について考えたという。

 「個性を表現することと、本作の専好さんのように人への思いやりや人望を集めることを両立するのは、難しいことなのかもしれません。私自身、狂言を継承していく者としては、伝統を貫く保守性と美を追求していく芸術性、人から愛される娯楽性、人好きのする親近感というものが必要であると考えています。専好さんのような生き方が伝統文化を担うことの一つのモデルケースになると嬉しいです。現実にはいろいろ問題を抱えていたりするわけですけれども、愛される継承者であり指導者になるということは我々の一つの夢ですね」

 生け花による映像美と、久石譲の情緒的な音楽も本作の見どころ。生け花をはじめ、茶道、水墨画、歴史といった“日本の文化”が凝縮している映画『花戦さ』は本日3日から公開。

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