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上川隆也、「演じていない時でも、“役の人生”は続いている」

CULTURE
 舞台やドラマ、映画など多くの作品で存在感を放つ実力派俳優・上川隆也。主演を務めるドラマ『遺留捜査』(テレビ朝日)は2011年の放送開始から長きに渡り愛されてきた人気シリーズで、7月13日から第4シーズンが放送開始となる。人の心に寄り添う刑事・糸村聡というキャラクターへの思いや、“刑事ドラマ”がなぜ人を引き付けるのかといった、ベテラン俳優の視点で仕事のこだわりも語ってもらった。

■“きちんとふざける”ことができる幸せ

 人気シリーズドラマ『遺留捜査』は、舞台を京都に移して新たなシーズンをスタートさせる。事件そのものを解決するだけでなく、遺族の心情をも救う優しさと、超マイペースで空気を読まない不思議キャラの糸村を第1シーズンから6年に渡って演じてきた上川。糸村を演じる上でどのようなことを大切にしてきたのか。

 「糸村は常識にとらわれずに行動しますが、 “真面目な常識はずれ”でありたいと思いながら演じています。ふざけて見えるかもしれませんが、世間の常識から逸脱しているだけの男ではなく“人の想い”を繋いでいくことこそ糸村の本質。今回のシーズンでもこれまで踏まえてきた糸村らしさを軸に“きちんとふざける”ことを大事に演じたいと思っています」

■客観視を重視。自分なりの仕事の向き合い方を追求する。

 演じた役のキャラクターに感化される役者も多いと聞くが、上川は“同じ役を長く演じてきたからといって、それが自分自身に影響を及ぼすことはありません”とハッキリと述べた。その言葉は役者として生きる上でのブレない精神の現れだ。

 「糸村に限らず、演じるキャラクターに僕自身の実感や、ものさしのような尺度を持ち込むことはありません。もちろん糸村の奔放さや時に見せる人並みはずれた集中力に感心することはありますが、だからといってそれが僕に影響することはないし、役柄と僕の共通点なども全く考慮しません。そもそもどんな役も自分とは違う人物と捉えて演じています。舞台でもドラマでも、現場が終わった瞬間に僕は僕自身に戻っているので引きずることもないんです。演じる役をどこか第三者的な目線で見ていて、精神的な切り替えも特に必要なく、演技に入った瞬間から役として生きる自分がいます。役が生きる時間と僕が生きている時間はあくまでも並列で進行しているような感覚です」

■演じていない時でも、“役の人生”は続いている

 人気シリーズとなった“刑事ドラマ”を、上川は役者としてどのように楽しんで演じているのだろうか。

 「例えば世界一周をしている乗り降り自由なクルーズ船に乗っていたとして、僕がイギリスで一度船を降りても船は止まる事なく進んでいきます。なので、次に僕が乗船する時、その船はインドにいたりする。今回はそんな感覚で新シリーズと再会した気分でいます。少し間が空けて再び糸村を演じる訳ですが、久々に会った糸村に対して“ここにいたのか”という感覚になったといいますか。一緒に『遺留捜査』という船に乗っていた糸村は、イギリスからインドへの渡航期間中にもきっといろいろなことを体験しているはず。今回京都に異動になった経緯などもその一部でしょう。それらを彼の言動から想像し演じるのは楽しいですし、視聴者の方々にも自由に想像して楽しんで頂けたらと思います。『遺留捜査』をご覧くださる皆さんをはじめ、この作品に関わる全員の乗った船が今回の目的地に辿り着くことが現在の目標かもしれません。最終話まで無事に航海を続けられたらと思っています」

■刑事ドラマの魅力はタブーとカタルシス

 『遺留捜査』だけでなく『太陽にほえろ』『あぶない刑事』『はぐれ刑事純情派』や『相棒』、『警視庁捜査一課9係』…など“刑事ドラマ”はシリーズ化されて長年続く人気のジャンルである。何故こんなにも多くの視聴者に愛されるのだろうか? 俳優である上川から見た“刑事ドラマの魅力”とは。

 「あくまでも私見ですが、タブーとカタルシスがわかりやすく描かれているのが“刑事ドラマ”なのではないでしょうか。踏み込んではいけない部分に行ってしまった犯人の意識や行動、そういった“規範から外れてしまうこと”や“決してやってはいけないこと”に対する好奇心は誰にでもある。人は“やってはいけないこと”を見たり聞きたくなる生き物ですから(笑)。その“タブー”が犯罪ドラマのひとつの魅力なのかもしれません」

 「また一方で、刑事達が犯人を逮捕する瞬間など、視聴者の正義を代弁することで感じられるカタルシスも描かれる。その両極端な体験を一度に受け取ることができるのが“刑事ドラマ”の魅力ではないかと。だから人気があるのではないでしょうか。更に一話ごとに事件が解決していくことが多いので、たまに見逃してしまっても次の話を楽しめる気楽さもあるでしょう。そういったさまざまな要素が組合わさって、多くの方に長く愛されるジャンルになっているのだと思います」

■「苦労は笑い話に昇華する」

 一言一言ゆっくりと丁寧に、作品への愛情と視聴者への大きな感謝の言葉を紡いでいく上川。過去の大変だった仕事の思い出を問うと、“そういった苦労は振り返れば笑い話にしかならない”と笑った。上川隆也流の人生の楽しみ方とは。

 「端から見て“大変”と言われるような厳しい環境での撮影だったとしても、出来上がった作品をお客様が楽しんでくださったならそこで昇華されてしまうものです。それにどんな撮影でも始まってしまえば必ず終わりはきますから(笑)」

 「役を頂いてから台詞の言いまわしや佇まいを考えることも、キャラクターのビジュアルを衣装さんやメイクさんと相談することも、もちろん演じている瞬間も、僕にとってはその作業のひとつひとつが心から“楽しい” ことなんです。ただ“演じるのが好き”という思いで始めた役者という仕事ですが、幸いにしてモチベーションを保ち続けたままここまで続けてこられたように思います。それは僕の“楽しい”という気持ちを支えてくださった人達がいるからこそ。役者という仕事は一人では何もできません。監督やスタッフさん、視聴者の皆さんがいてはじめて成り立ちます。僕には役者しかできないと思っています。だからこそ、これからも周りに感謝しつつ、自分にできることを精一杯やり続けたいと思います」

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