OLIVER

長渕剛、5年ぶりアルバム“熱さ”の源は「僕とあなた」

CULTURE
 熱いメッセージ性と情緒的なメロディーがファンの心を掴むミュージシャン・長渕剛。16日にリリースされた5年3カ月ぶりのニューアルバム『BLACK TRAIN』について、長渕剛がオリコンだけに制作秘話や楽曲に込めた想いを語ってくれた。「僕とあなた」と語った歌の原点、ミュージシャンとしての在り方、現代のリスナーへのメッセージなど、何故長渕剛の歌は男の心を揺さぶるのかをテーマに、“熱さ”の源について本人に迫った。

■アルバム制作秘話「何年ぶり、は関係ねえ。歌いたい時に歌う」

 ――2012年、『Stay Alive』から5年3カ月ぶりのニューアルバムとなります。前人未踏の富士山麓10万人オールナイトライブなどがありましたが、どんな5年間でしたでしょうか?

 「5年何カ月ぶりっていうとみんな驚くのかもしれないけれど、僕の中でそういう発想はない。1年間にアルバム出して、シングル何枚切ってっていうのは、レコード会社との契約の話なだけであって。それがルーティーンワークになると嫌なんだよね。アルバムを発表する根源的な理由は、俺がしゃべりたい、俺が今絶対に歌いたい、今叫びたい、お前に聴いてほしい!ってこと。そういう時にしか作品を発表しないということに決めたんだ。それが今回はたまたま5年数カ月ぶりだったというわけだね」

 ――今作のタイトル曲であり、リード曲の「Black Train」のMVは、見渡す限り地平線が広がる荒野に列車を走らせる壮大なスケールでした。あのインスピレーションはどこから? まさかとは思いますが・・・荒野にレールを敷いて列車を走らせたのでしょうか。

 「ハッハッハ。そう思わせるようなことをやっちゃえ!ってね。MVの話が出たときにスタッフから、どうします?って言われてさ。『どうもこうもねえよ、BLACK TRAINなんだから列車に乗って歌おうよ』って。もう少年の心ですよね。追いつきゃしないんだけど走って列車を追いかけたりしてた、少年の頃の夢ですよ。乗りてえな〜って思って、それができるところが見つかったものだからさ」

 ――今作では、自身で描いた絵を初回限定版のジャケットに採用していますね。その列車がMVで実際に走って、長渕さんが列車の先頭で歌っています。あの列車はどうやって調達したのですか?

 「あれは、列車の街があるんですよ。観光で来た人は列車の後ろに乗せてくれるわけ。ただし、僕がPVを撮らせてもらった荒野は、乗っちゃいけないところだった(笑)。でも僕は前に乗りたい。『前で乗って歌うんだ』って言ったら『お前何言ってんだ!?』『いや、乗りたいんだから乗せてよ』って。でもね、熱さは伝わるんですよね。お前は困った奴だな、となってね。そのうち撮影クルー全員で、ガキみたいに悪だくみして、『今だ! 回せ回せ!』それでガーッとやっていたら、最後は呆れて笑ってたね“クレイジーだ”ってね(笑)」


■敗北は本質的な負けではない、負けて見つかることがある

 ――(収録曲「Loser」について)男は、誰かを守るために負けを背負うこともあると思います。それでも生きていかないといけない、男の哀愁や不屈の精神を感じました。

 「まず…勝てるわけがないのよ、人間なんて。ウチの親父は、種子島で生まれて、無学で、身体を張って警察官になった。前線で勝ちあがるために柔道もやって身体を鍛えて、40手前で組織犯罪対策第四課(マル暴)に配属された。そんな中、親父は何度も昇進試験に失敗して、家では母といさかいが絶えないわけ。小学生の頃、親父がバイクで温泉に連れて行ってくれたんです。その帰り道で、浜にバイクを止めたんですね。そしてタバコをくゆらせる。何にも言わないんですよ。僕はその時にそばに寄っちゃいけないなと思った。カッコいい親父が、寂しそうにタバコをくゆらせていたわけです。…これが敗北感なんじゃないかな、って歳を重ねると思えてくる。『親父、勝てないんだな』って」

 「でも、負けても負けても譲れないものが親父にもあったはずだ。『俺は無学だ、でもお前には負けてねえぞ』、その想いこそが敗北感を捨て去り、男として身を立てたのでないか。明らかに敗北というものを見つめて、親父が黙って敗北感を背負って“いつか俺も…”と煙草をくゆらせた。負けた人間は一人じゃない。『お前も負けたのか、お前もか、お前もだろう。負けた人間みんなで拳をあげろ!負けたー!』って。勝者を祝う気持ちよりも、負けた人間が連隊して勝ち上がっていこうとする思いは強い。そのことを今の時代に生きている人たちに感じてほしかったのかな」


■自分のために生きることが、誰かのためになっていく

 ――(収録曲「自分のために」について)本当にストレートに「自分のために生きていれば何にでもなれる」と表現していますね。

 「あんまり若い時は人のためにって思わないほうがいいよ。ロクなことが起きない。一番正直な答えは「自分のために」。とにかく我が道を貫くこと。他者がどうなるとか、こう考えるとかという前に“私はどうなんだ”っていう凛とした考えを持つことが大切。10代20代の魂、あるいは30代で世の中の風が分かって要領よく生きようとする自分も正しいけれど、自分のために生きていくと、いつかは『こういう生き方でいいんじゃないか』という自己肯定につながったり、『ああ、こういう生き方いいな』と誰かに影響を与えていくことになる。若い子たちには、『君たちが思っていることは正しい。だけど、“自分のために”やってごらん』って僕はいつも思っている。正しいんですよ、心が感じたことは」


■長渕剛の楽曲の熱さの源は「僕とあなた」

 ――「誰が何と言おうと関係ない、俺にとってはこうなんだ!」そう言えるやつが音楽を作っていくべきだと公言されています。長渕さんにとっては音楽とは? メッセージの源になっているものは一体何でしょうか?

 「時代は額縁。時代は移り変わっていくもので。人間ってのは、時代や相対する人を通さないと自分を見つめることができないわけですよ。時代の変遷とともに、自分がどのような人間であるかって、常に表現者は考えている。『冗談じゃないよ!』っていうことから、『切なくてお前を大好きなんだよ』…この時代に生きてみんな想いをたくさん抱えている。その中に、メロディーや鋭角的な詩を矢として放って自分が切り込んでいく覚悟を持っている。それがラブソングになったり、メッセージ性が強いと言われる楽曲に結果的になることもある。時代の中にいる“僕とあなた”という関係性の中に歌を放ったときに、その答えを『どうなんだよ?』って話し合っていきたいというスタンスなんだよね」

 ――人間が営む日々の生活を含めた「現代社会という水面」に、「長渕剛の歌という“石”」を投げ入れて、どんな波紋が生まれるのかを見ているというような感覚でしょうか。

 「水面は世の常、世の中の大きな…不特定多数のようなもの。インターネットに音楽を配信したら、誰が聴いているのか分からない、というようなことだと思うんだけれど、僕にとって音楽は確実に“僕とあなた”なんですよ。お前とか、君に問う、君に歌う、どうだい?っていうスタンスですね」

 ――結果的には音楽は何万人に届いているが、人数は関係なく、そこの先にいる一人に届けられればいいと。

 「そう。『君と僕』。常にその関係性は昔から変わらないね」

 ライブの熱狂も定評がある長渕剛。ファンに向けた歌ではない、“お前”に向けた歌だから、熱さをもってリアルにリスナーに届く。長渕は2015年に行った富士山麓オールナイトライブと同じ2017年8月22日に、新アルバムを引っ提げて日本武道館で一夜限りのプレミアムライブを行う。研ぎ澄まされた、今の長渕剛が再び、音楽の聖地でファンと共に拳を突き上げる。

YouTube公式チャンネル「ORICON NEWS」

タグ
  • Facebook
  • Twitter
  • Google+
  • Pinterest

OLIVER SPECIAL INTERVIEW

  • 北野武
  • MIYAVI
  • ISSA(DA PUMP)
  • オダギリジョー
  • 玉山鉄二
  • 古谷徹
  • 長渕剛
  • 長渕剛
  • 伊勢谷友介
  • 小林武史
  • 窪塚洋介
  • 藤原竜也
  • 長澤まさみ