OLIVER

何かを始めたくなる「本・映画・音楽」

CULTURE
マンスリーテーマに合わせた作品を知識人から推薦いただく連載カルチャーコラム。4月のテーマは、前向きな気持ちになれたり、冒険心をくすぐるような、何かを始めたい時に触れたい作品を推薦いただいた。時代を超えて愛される名作に触れ、新しい自分の扉を開いてみては。
<BOOK>

何かを失うことで、大切なものに気づく 前向きに「生きること」を考えさせられる

著:柴田翔 文藝春秋

著:柴田翔 文藝春秋

BOOK1『されど われらが日々――』

「1955年、共産党第6回全国協議会(六全協)の決定で武装闘争方針の放棄が決議された。『六全協』後の虚無感の漂う時代の中で、出会い、別れ、闘争、裏切り、死を経験しながらも懸命に生きる男女を描く。60〜70年代の若者のバイブルとなった青春文学の傑作…と、あらすじでは書かれておりますが、文字通りに受け取らないように。学生運動や武装闘争というものは、あくまで背景であり、本作品のテーマではありません。目標への挫折や恋愛、死が主に取り上げられ『人生の転機』そのものがテーマとなっております。本書の内容を表すのであれば、これといった目標はなくなんとなく生きている青年が主人公の、“あるもの”を失うことで大切な何かに気付く、深い深い喪失の物語です。しかし、喪失の物語でありながら、読後は奇妙にさわやかで、ふしぎと前向きになれる一冊です。これを手に、受け身の人生をやめて、物語の主人公とともに『生きること』を始めてみてはいかがでしょう?」

読後には心が震える、「一日」の大切さに気付かされる一冊

著:アレクサンドル・ソルジェニーツィン 新潮社

著:アレクサンドル・ソルジェニーツィン 新潮社

BOOK2『イワン・デニーソヴィチの一日』

「1962年に発表されたアレクサンドル・ソルジェニーツィンの文学作品。デビュー作であり、世界的なベストセラーとなった作品。主人公イワン・デニーソヴィチ・シューホフの収容所(ラーゲル)での一日を描いたもの。それ以上でも以下でもありません。延々と、朝から晩にかけての平凡な一日が丁寧に描かれています。読んでみると、他人の生活をのぞき見するような楽しさがあります。しかし、最後の一文できっと、心が震えてしまうはず。なぜ、心が震えてしまうのか。気になる方は、ぜひ本書を手に取ってみてください。ただし、最後の一文をいきなり読まないこと。物語をすべて読んで、はじめて意味が生まれる一文です。流れるように過ごしてしまっている無駄な一日を改め、新たな一日を始めていきたい方におすすめです」

純文学のもつ良さを味わえる 共感し、考えてしまう作品群

著:黒井 千次、後藤 明生、阿部 昭、坂上 弘、古井 由吉 講談社

著:黒井 千次、後藤 明生、阿部 昭、坂上 弘、古井 由吉 講談社

BOOK3『「内向の世代」初期作品アンソロジー』

「後藤明生、黒井千次、阿部昭、坂上弘、古井由吉の初期短中篇を黒井氏が精選したアンソロジー作品。シンプルな表紙だけで判断してはいけない、秀逸なアンソロジー作品です。私は本書に収録された作家たち――なかでも、後藤明生氏と黒井千次氏が大好きです。両名ともに、現代社会にひそむ“ヘンテコな部分”を浮き彫りにしていく物語が私にはツボなのです。本当ならそれぞれの作品、後藤氏の『ある戦いの記録』、黒井氏『聖産業週間』をすすめたいのですが、これらは絶版なのでまず入門編として本書を選びました。本来、純文学とよばれる小説は、大仰なテーマをふりかざした難しくひねくれたものではありません。とくに、彼らが活躍した頃の純文学は、平和な世の中で暮らす我々のさまざまな問題に肉迫したものなので、『共感し、考え込んでしまう』ものばかり。純文学が本来持つ良さを味わえる作品で、しっかりと文学作品の『読書』を始めるのに、良い一冊です」

身の回りの変化や新しい季節を感じる 「観察眼」を育むきっかけに

著:澁澤龍彦  平凡社

著:澁澤龍彦  平凡社

BOOK4『フローラ逍遥』

「澁澤龍彦の植物エッセイ。花をめぐる25のエッセイとともに、それぞれの花にアンティークの植物画が添えられた、装丁・内容の美しさにも定評のある作品。春といえば、さまざまな花が咲き新緑が生い茂る季節。山吹、鈴蘭、金雀児、牡丹、花水木、月桂樹……。ふと、あたりを見回すと、名もない花が咲いていることもあります。そうかと思えば、空気はたおやかで、虫たちが活発に動き出している。都会に住む人間も、服装が変わり、電車内では陽気に誘われ心地よく眠っている人がいる。改めて、自分の周りをじっくり観察してみれば、こんなにも当たり前のようで当たり前でない、ただ一度の発見があります。本書は、そんな“観察”を身につけるのに、格好の書物です。モノ、ヒト、自然、あらゆる観察を始めてみたい方に薦める一風変わった博物誌です。美しい花の挿絵とそれにまつわる小話だけの作品にもかかわらず、知識と色気が程よく融合され、優美に香り立つ文体がなんとも魅力的です」
recommendation
リーディングスタイル
書籍担当 金 杜昊さん
スタッフが一点一点こだわってセレクトした、大人の知的好奇心を刺激する書籍と遊び心を刺激する雑貨を揃え、店内の書籍を試読できるカフェも併設するライフスタイル提案型のブックカフェを展開する「リーディングスタイル」。「マルノウチリーディングスタイル」はその旗艦店として東京・丸の内の商業施設「KITTE」4Fに出店。365日それぞれに推薦書物を展開する「バースデー文庫」などの企画は全国的にも話題になった。リーディングスタイルプロジェクトとして「solid&liquid MACHIDA/TENJIN」「スタンダードブックストアあべの」「BOWL 富士見/海老名」なども展開する。
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